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楽しい森林ウォーキング 天狗棚 2023/9/14 [山歩き・ウォーキング]

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 原生林が残る苔の谷を行く

 「とよた森林学校」(事務局:愛知県豊田市森林課)主催の『楽しい森林ウォーキング』観察会に参加してきました。 第1回目の場所は愛知県豊田市にある面の木(天狗棚)。

 とよた森林学校では毎年森に関連する研修会や観察会を主催しており、北岡明彦氏がメイン講師を務める観察会は人気です。
 teppanは9年ぶりの観察会。今回抽選に漏れたのですが、欠員があって参加させてもらえることになりました。この観察会は計3回で、1回目のこの日は愛知県内では貴重なブナの原生林の残る天狗棚周辺を歩きながら草花や樹木を観察すると言うプログラムです。

 面の木園地駐車場に集合、担当のNさんからスケジュール説明を受けたあと、2班に分かれてスタートしました。歩きながら慌ててメモした内容を元に、講師の説明を思い出しながらのレポートですので、間違っていましたらご容赦下さい。

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 「スズカアザミ:鈴鹿薊」面の木園地駐車場近くで咲いていました。愛知県以西ではごく一般的なアザミです。


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 「コフウロ:小風露」てっきりゲンノショウコだとばかり思っていたら違いました。花がひとまわり小さく、葉の切れ込みが深い点で区別できるそうです。


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 意外だったのがこの原生林のブナの樹齢。講師が抱きついているブナは樹齢200年を優に超えているそうです。日本海側とは異なり太平洋型のブナは成長速度が遅く、細くてもかなりの樹齢なんですね。teppanはもっと若い木だと勘違いしていました。



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 うつむいて咲く「ワタムキアザミ:綿向薊」和名は鈴鹿山脈にある綿向山に由来します。


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 ホウキタケの仲間。今年は猛暑&残暑でマツタケなどキノコの生育が良くないそうです。


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 ジンバイソウはランの仲間

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 ジンバイソウの葉は2枚で互生、縁は波打っていました。


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 「コマユミ:小真弓」の実

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 こちらはツリバナの実が開く寸前の状態。マユミやツリバナの仲間は、実が色鮮やかで形が可愛いです。※Nさんご教示ありがとうございましたm(_ _)m


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 葉っぱをかじると酸っぱいスノキ(写真)、メントールの香りがするタムシバ、目の疲れにメグスリノキなど、気分転換や疲労回復に役立つ植物の雑学は興味大です。


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 天狗棚展望台に着きました、空気が澄んでいれば南アルプスや富士山が展望できますが、この日は残念ながら真っ白でした。


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 ベンチに「シナノキ:科の木」の枝が落ちていました。葉の形が中央を境に左右非対称になっているのが特徴だそうです。北海道に多く自生し、”信濃”の語源になったとも言われている樹木。愛知県内では珍しいとのことです。


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 ナンキンナナカマドの実。展望台周辺ではベニドウダン、ヤマボウシ、オオイタヤメイゲツなど、色々な樹種を観察できました。


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 展望台は尾根の先端近くの断崖上にあるため特殊な植生のようです。講師は写真の老ブナに強い感心を持っておられるようでした。


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 キハダの樹幹をほんの少し削って内皮を覗いたところ、名前のとおり黄色です。御嶽山の胃薬で知られる「百草丸」の主成分「黄檗:オウバク」がキハダの内皮だそうです。少し口に入れてみるといかにも”薬”といった風味でした。


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 奥三河地方では6~7年前に開花したスズタケが一斉に枯れたのですが、写真は新しい株が再生してきて3年目くらいの状態だそうです。背丈を超える高さで密集するスズタケの藪は、入り込むと脱出に難儀するほどでした。スズタケが枯れて周囲が明るくなっている今こそ成長の遅いブナが育つチャンスなのに、幼ブナはほとんど見られないそうです。

 笹・竹類の花が咲くのは一生に一度だけ、スズタケに関しては120年に一度開花して一斉に枯れてしまうとのこと。バイケイソウも同様だそうです。teppanは毎年同じ場所でバイケイソウの花を見ている気がしますが、数年に一度開花すると枯れてしまうとは知りませんでした。


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 こちらはよく見かけるトリカブトだと思っていたら、「カワチブシ」という種類だそうです。「ブシ:附子」とはトリカブトの根を乾燥させた生薬の一種で、和名は金剛山(河内)で最初に見つかったことによるそうです。

 この草の仲間は猛毒で、1986年に沖縄で起こった殺人事件に使われたことで”トリカブト”の名が広く知られるようになったとのことです。また、ニリンソウの若葉を春の山菜として食用にするそうですが、同時期に生えて来るトリカブトの葉がそっくりなため、よく誤食して中毒が起きているそうです。


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 茎に毛がないのが他のトリカブトとの相違点で、天狗棚周辺で見かけるほとんどかこの種だそうです。


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 「ミヤマシキミ:深山樒」葉っぱを揉むと柑橘系の爽やかな香りがします。有毒なので口には入れないように。


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 天狗棚稜線の東側は国有林で樹齢100年ほどのヒノキ植林になっています。根元の周囲は鹿による食害で皮が剥がされていました。


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 それとは対照的に西側は原生林。写真の樹齢400年越えのブナは幹を叩くと空洞になっていることが判りましたが、そんな楽しみ方もあるんですね。ちなみにモミの寿命は最長200年で、大部分は100年前後で枯れてしまうそうです。ツガはブナと同じく最長400年とのこと。

 面の木のブナは樹形で世代や生い立ちが分かるそうです。幹の下の方から太い枝(力枝)を伸ばしているのは樹齢300~400年の親世代。下の方に枝がなくて背が高いのが子ども世代、周りの樹木に圧倒されてか細い孫世代。次世代を担う赤ちゃんブナがほとんど居ないのが気なるところ。


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 カエデの一種「オオイタヤメイゲツ:大板屋名月」 葉が丸い感じを満月に例えるなんて、名付けた人はきっと粋な方に違いない。


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 ピンボケなんですが、ブナの古木に着生するヤシャビシャク(だと思われる)。倒木に着いていたのを天生で見たことがあります。ブナに着生する植物は幾つかありますが、ヒナチドリという美しい着生ランもあるそうです。


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 ブナの実。蕎麦の実に似ていることから”ソバグリ”とも呼ばれ美味しいそうです。


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 皆さん何をしているのか?と言いますと、


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 夢中になってヤマボウシの実を拾っていました。熟した実は甘くてとても美味しかったです。


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 「コミネカエデ:小峰楓」真っ赤に色づき肉厚が薄いので、天ぷらにするのに最も向いているとのこと(講師談)


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 この歩道沿いのブナも樹齢400年級でしょうか?



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 倒木に密生していた灰色のキノコ、調べてみたら「イヌセンボンタケ」のようです。木材腐朽菌と呼ばれるキノコの一種。彼等の働きで倒木が土に還っていくんですね。


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 ブナの幼木。直径10センチにも満たないですが樹齢30年くらいだそうです。生き延びていけるでしょうか?


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 天狗の奥山(1200高地)に到着、ここでランチ休憩。


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 teppan家の山メシは名宝ハムごはんとサラダ。


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 休憩後は矢作川源流の谷を下ります。写真は折れてしまったブナ。ブナは根が浅いので台風などで倒れやすいとのことです。


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 ブナが倒れてポッカリできた空間。この絶好の機会を逃さず育つ植物もあるんですね。


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 鈴なりに実を付けた「タンナサワフタギ:耽羅沢蓋木」
”タンナ”とは韓国済州島に由来すると説明がありました。調べてみると「耽羅:たんら」という国が古代済州島に存在したそうで、そこに自生していたことから付いた名前のようです。サワフタギのは実は青くなりますが、本種の実は黒くなるそうです。


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 「ウチワゴケ:団扇苔」。こちらは”コケ”と名が付くのにシダだそうです。『維管束』という水分や養分を送る器官の有無で、シダと苔はハッキリ分類できるそうです。


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 太いツルがぶら下がっていましたが、これもサルナシだと聞いてビックリ!



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 ウスヒラタケ、美味しいそうです。


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 葉っぱの形が特徴的な「オヒョウ:於瓢(オヒョウノキ)」 北海道に多い樹木でアイヌ語に由来する和名。沢沿いを好むニレの仲間だそうで、葉っぱがザラザラしていました。


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 「ノコンギク:野紺菊」


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 「ウラジロノキ:裏白の木」は名前の通り葉っぱの裏が真っ白です。


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 こちらはカツラの木です。落ち葉はメープルシロップに似た甘い香りがします。秋に森の中を歩いていると甘い香りが漂ってくる事がありますが、よく近くにカツラがあったりします。


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 「フサザクラ:房桜」一般的なサクラとはまったく違った形の花が咲きます。


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  ハンショウヅルの種だったかな?


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 こちらは「トヨボタニソバ」という野草。


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 ものすごく小さな花ですが、目を凝らすと5弁花なのが分かります。愛知・長野、そして九州に隔世分布するようですが、主な自生地はここ愛知県奥三河。まだ図鑑にも載っていない珍しい種類だそうです。ミヤマタニソバに似ていますが、花柄が長い点が区別できる特徴とのこと。


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  枯れ枝で突いて落としたサワグルミの実。小さすぎて食べ応えはありませんが美味しいそうです。国産ナッツの代表オニグルミは里に、サワグルミは高地に自生するそうです。


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 「ツルニンジン:蔓人参」1個所で蕾、実、花が全て観察できました。


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 「オオミヤマガマズミ:大深山莢蒾」高地に分布、葉っぱに艶がない。


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「エンシュウツリフネ:遠州釣舟」この野草も自生地が限られる珍しい種類。


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 葉腋(葉の付け根)から花柄が伸びて葉っぱの真下に隠れるように花が咲きます。ハガクレツリフネの変種だそうです。ツリフネソウと比較すると花がひとまわり小さかったです。


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 こちらが「ツリフネソウ:釣舟草」花柄を斜め上に伸ばして株の上部で花を咲かせます。


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 「ユウガギク:柚香菊」和名は柚の香りがするからとのことですが、ほとんど匂わないとのこと。花はまばらに咲き、種子に冠毛(綿毛)がほとんどないのが特徴だそう。


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 「タマアジサイ:玉紫陽花」


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 玉のようなツボミを表現した和名。


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 バライチゴ


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 「サルナシ:猿梨」の実。美味しいそうですが、高い場所にあったので届きませんでした、残念!


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 「アブラチャン:油瀝青」の実、講師に勧められてシロモジの実と香りを比べてみました。樟脳の原料となるクスノキの仲間でどちらも清々しかったですが、微妙に違うような…


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 みなさんご存じ「サンショウ:山椒」の実。こちらも勧められて噛んでみましたが、強烈な刺激でしばらく舌が麻痺したままでした… 止めておけば良かった^^;


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 駐車場で咲いていた「マルバノホロシ:丸葉のほろし」の花と真っ赤な実。
葉が丸くないのに”マルバ”とは? よく似た同属のヒヨドリジョウゴ(古名:ホロシ)に切れ込みのある葉が出ることに対する和名だそうです。 以上観察会で見つけた主な植物でした。


(あとがき)
 植物の名前や特徴だけの解説だとなかなか記憶に残りません。でも北岡先生はその植物に関するエピソードや効能、先生の個人的な感想などを交えて面白おかしく話して下さるので、楽しく印象に残りやすいのが人気の理由だと思います。
 先生は植物・昆虫・鳥などに関して子どものように尽きない興味と探究心をお持ちのようで、NHK朝の連続ドラマ「らんまん」の主人公を地でいくような方です。この日もご自身がワクワクしながら観察会を楽しんでいらしゃる、そんな印象でした。

 1グループ10人という小人数でしたが途中で間延びしてしまい、最後尾は講師の説明が満足に聞き取れない事が多々ありました。山道なので狭くて難しいとは思いますが、できればグループが集まった時点で説明を始めて下さるとありがたいなと思いました。 

 久しぶりでしたが楽しく有意義な観察会でした、設営して下さった皆さまに感謝!次回は9月28日の予定です。

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 カツラの落葉は良い香りがするそうなので、持ち帰ってグラスに入れてみました。乾燥したら少し濡らすと良いそうです。



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